内分泌センター/内分泌内科
内分泌外来について
内分泌疾患(下垂体疾患・甲状腺疾患・副甲状腺疾患・副腎疾患・性腺疾患など)、高血圧疾患の診療を行います。特に、副腎疾患(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、サブクリニカルクッシング症候群、褐色細胞腫・パラガングリオーマ、副腎偶発腫瘍など)の専門的診療を行います。
診療方針
- 1.ガイドラインに準拠した標準的かつ専門的医療を行います。
- 2.関連診療科(総合診療科・糖尿病センター・循環器内科・泌尿器科・放射線科など)との院内連携、国立病院機構京都医療センター・京都大学・京都府立医科大学などとの病病連携、地域医療機関・医師会との地域連携を推進し、当院の特色を生かした内分泌疾患の診療を行います。
担当医
甲状腺の病気について
甲状腺は頸部(首)の甲状軟骨("のどぼとけ")と気管の上部の前面にあり、右葉と左葉が蝶々の羽根のように繋がった形をしています。体の中のいろいろな代謝を調節する甲状腺ホルモン(サイロキシンとトリヨードサイロニンの2種類あります)を作っています。甲状腺の病気には甲状腺ホルモンが不足する病気、甲状腺ホルモンが過剰になる病気、甲状腺の腫瘍があります。
- 甲状腺ホルモンが不足する病気
甲状腺機能低下症とよび、ホルモン不足により体内の代謝が低下する結果、身体や精神の活動性が低下するとともに、高コレステロール血症もきたします。橋本病と呼ばれる慢性甲状腺炎が主な原因です。
- 甲状腺ホルモンが過剰になる病気
甲状腺機能亢進症(甲状腺中毒症)とよび、ホルモン過剰により、体内の代謝が亢進する結果、動悸、発汗過剰、食欲亢進、体重減少などをきたします。バセドウ病と橋本病の経過中に起きる無痛性甲状腺炎が代表的です。
- 甲状腺腫瘍
様々な種類の甲状腺腫瘍があります。良性と悪性(甲状腺がん)があり、慎重な経過観察、細胞診などの適応となります。当院、耳鼻咽喉科と密接に連携して診療にあたります。
副腎の病気について
副腎は腎臓の上に位置する内分泌臓器で、左右一個ずつの合計2つあります。いろいろなホルモンを産生して血液中に分泌し、身体の様々な働き(糖や脂肪の代謝、ナトリウムやカリウムの代謝、血圧などの)を調節する重要な役割を担っています。副腎腫瘍は副腎から発生する腫瘍で、いろいろな種類があります。重要なポイントは、1)ホルモンを過剰に作っているかどうか、2)良性か悪性か、の二つです。ホルモン過剰や悪性が疑われる場合は手術による摘出が必要なことから、適切な診断が非常に重要です。
【副腎腫瘍の種類】
- 副腎偶発腫瘍
- 原発性アルドステロン症
- 褐色細胞腫(パラガングリオーマ)
- クッシング症候群
- サブクリニカルクッシング症候群
- ACTH非依存性大結節性副腎皮質過形成(BMAH)
- 副腎がん
- 非機能性副腎腫瘍
病気の特徴
原発性アルドステロン症
[どんな病気か]
-
副腎からアルドステロン(ホルモン)が過剰に分泌される病気
①副腎細胞のカリウムチャンネル遺伝子の異常が原因の一つ
②片側副腎の腺腫によるタイプと両側副腎の過形成によるタイプがある
[症状]
- 高血圧、低カリウム血症による筋力低下など(但し約75%は血清カリウム正常)
[主な検査]
- 血液検査(血液中カリウムの低下)
- ホルモン検査(血液中アルドステロン増加、レニンの低下、アルドステロン/レニン比の増加)
- 副腎CT(副腎腺腫)
- 副腎静脈サンプリング(片側副腎からのアルドステロン分泌過剰を確認)
[治療法]
- 片側性副腎腺腫では腹腔鏡下副腎摘出が原則
- 両側性の場合は薬物治療(アルドステロン拮抗薬など)
褐色細胞腫(パラガングリオーマ)
[どんな病気か]
- カテコールアミン(ホルモン)が過剰に分泌される病気
- カテコールアミンにはアドレナリンとノルアドレナリンの2種類がある
- 副腎から発生する褐色細胞腫と傍神経節から発生するパラガングリオーマがある
- 様々な遺伝子異常の関与が報告されてきている(全体の約25%)
- 約10~15%が悪性・転移性である
[症状]
- 高血圧(発作性、持続性)、頭痛、動悸、発汗、心筋梗塞のような胸痛、不整脈など。日頃は全く無症状で、何かのきっかけに高血圧クリーゼを示すことがある
[主な検査]
- ホルモン検査(血中、尿中カテコールアミンとその代謝産物の増加)
-
画像検査
①CTやMRI(副腎腫瘍あるいは副腎外の腫瘍)
②シンチ:123I-MIBGシンチグラフィ(カテコールアミン過剰産生部位に取り込みが増加)
③FDG-PET(必要に応じて:複数の病変や転移の発見)
[治療法]
- α遮断薬によるカテコールアミン過剰による高血圧の治療
- メチロシン(商品名:デムサ―)併用によるカテコールアミン過剰の改善
- 腹腔鏡下手術による腫瘍の摘出
- 悪性例ではCVD化学療法、123I-MIBG内照射(治験中)、骨への外照射など
クッシング症候群
[どんな病気か]
- 副腎からコルチゾール(ホルモン)が過剰に分泌される病気
- 下垂体腫瘍によるクッシング病と副腎腫瘍による‘狭い意味’でのクッシング症候群がある
- 副腎細胞における遺伝子異常が原因になる場合がある
- 多くは良性の腫瘍(腺腫)であるが、一部は悪性腫瘍(副腎がん)による
[症状]
- 特徴的な身体所見(顔が赤くまるくなる、ニキビ、項部の脂肪沈着、手足が細くなる、皮下出血など)、高血圧、糖尿病、脂質異常、骨粗しょう症など
[主な検査]
- 血液検査(血中カリウムの低下、高血糖、コレステロール増加など)
- ホルモン検査(血中コルチゾール増加、コルチゾールの日内リズムの消失、デキサメタゾン抑制試験でコルチゾールが低下しない、など)
- 画像検査
①副腎CT(副腎腺腫)、下垂体MRI(クッシング病では下垂体腫瘍)
②131I-アドステロール副腎シンチグラフィ(腫瘍側のみに取り込みあり)
[治療法]
- 各種薬剤による高血圧、糖尿病の治療、メチラポン(商品名:メトピロン)によるコルチゾール分泌量の減少
- 腹腔鏡下手術による腫瘍側副腎の摘出
- 副腎がんではオペプリム(商品名:ミトタン)、その他の化学療法
- 術後一定期間のホルモン補充療法
サブクリニカルクッシング症候群
[どんな病気か]
- コルチゾールの軽度の過剰分泌があるが、身体所見が明確でない副腎腫瘍を指す。偶然に発見される「副腎偶発腫瘍」での頻度が高い
- 厚労省の診断基準に準じて診断する必要がある
[症状]
- 通常は無症状である
- 高血圧、糖尿病、脂質異常、肥満などを伴うことが多い
[主な検査]
- クッシング症候群に準じた検査
[治療法]
- 悪性が否定できない場合や高血圧、糖尿病を悪化させる要因になっている場合は、腹腔鏡下副腎摘出術
- 手術しない場合でも定期的な経過観察が必要(半年から年一回程度)
ACTH非依存性大結節性副腎皮質過形成(BMAH)
[どんな病気か]
- 両側副腎が全体に大きくかつ結節が多発する病気で、コルチゾールの過剰分泌によりクッシング症候群を示すことが多い
[症状]
- コルチゾール分泌が過剰な場合は、クッシング症候群と同じ症状
- ホルモン過剰がない場合は無症状
[主な検査]
- 血液検査(血中カリウムの低下、高血糖、コレステロール増加など)
- ホルモン検査(血中コルチゾール増加、コルチゾールの日内リズムの消失、デキサメタゾン抑制試験でコルチゾールが低下しない、など)
- 副腎CT(両側副腎の結節性腫大)
- 131I-アドステロール副腎シンチグラフィ(両側副腎への取り込みが増加)
[治療法]
- 各種薬剤による高血圧、糖尿病の治療、メチラポン(商品名:メトピロン)によるコルチゾール分泌量の減少
- 腹腔鏡下手術(場合により開腹手術)による副腎亜全摘(約3/4~5/6を切除)
副腎がん
[どんな病気か]
- 副腎皮質から発生する悪性腫瘍
- コルチゾールや副腎男性ホルモンなどの過剰分泌を示すことが多い
- 周囲の臓器への浸潤や遠隔転移を伴うことが多い
[症状]
- 過剰となるホルモンにより、クッシング症候群や男性化などを示す
- 高血圧、糖尿病、低カリウム血症など
- ホルモン異常がなければ無症状が多い
[主な検査]
- 血液検査(血中カリウムの低下、血糖増加、コレステロール増加など)
- ホルモン検査(血中コルチゾール、DHEA-Sの増加、コルチゾールの日内リズムの消失、デキサメタゾン抑制試験でコルチゾールが低下しない、など)
- 副腎CT(副腎腫瘍)
- 131I-アドステロール副腎シンチグラフィ(通常、腫瘍側のみに取り込みあり)
- FDG-PET(副腎腫瘍以外に転移巣への集積あり)
[治療法]
- 各種薬剤による高血圧、糖尿病の治療、メチラポン(商品名:メトピロン)によるコルチゾール分泌量の減少
- 腹腔鏡下手術による腫瘍側副腎の摘出
- 抗がん剤オペプリム(商品名:ミトタン)
非機能性副腎腫瘍
[どんな病気か]
- ホルモン過剰を伴わない(即ち、非機能性)副腎腫瘍を指す
- 胸部あるいは腹部のCTなどで偶然発見される「副腎偶発腫瘍」の多くを占める
- 多くは良性腫瘍(腺腫)であるが、血管腫、骨髄脂肪腫、副腎嚢胞など種々の病気がある
- 時に悪性もあるので、慎重な鑑別診断が必要
[症状]
- ホルモンの異常がないため、通常は無症状
- 腫瘍サイズが大きいと周囲への圧迫による症状を示すことがある
[主な検査]
- ホルモン検査(種々の副腎ホルモンの測定)
- 必要に応じてMRI、副腎シンチグラフィなど
[治療法]
- 定期検査による経過観察
- 悪性が疑われる場合(腫瘍が大きい、不整形、腫瘍の増大傾向など)は手術適応
副腎静脈サンプリングとは
目的
原発性アルドステロン症において、アルドステロン過剰の原因が右副腎か左副腎かあるいは両側副腎かを明らかにする検査
方法
- 通常、2泊3日入院で実施
- 右鼠径部からカテーテルを挿入し、右副腎静脈と左副腎静脈から採血、血液中のアルドステロン濃度を左右で比較し、一定の基準に基づいて左右副腎のいずれが原因になっているかを診断する
- 通常、所要時間は1~2時間程度
- 実際の手技は放射線科専門医が実施する
- 検査担当スタッフの熟練度に加えて、検査に先立つ造影副腎CTによる副腎静脈の確認、検査中の迅速コルチゾール測定により、検査の成功率は飛躍的に向上している
患者向けの冊子・書籍
患者向け解説の冊子
1)原発性アルドステロン症
2)褐色細胞腫
3)クッシング症候群
※患者向け解説の冊子をご希望の方は、内分泌外来受診時あるいは下に記載の副腎相談窓口までご連絡ください。
【副腎相談窓口】fukujin.soudan@gmail.com
患者向けの書籍
- わかりやすい原発性アルドステロン症診療マニュアル(編集者 成瀬光栄・田辺晶代/診断と治療社/2008年)
- もっとわかりやすい原発性アルドステロン症診療マニュアル(編集 成瀬光栄・田辺晶代/診断と治療社/2011年)
- 患者のための「原発性アルドステロン症Q&A」(編集 成瀬光栄・田辺晶代/診断と治療社/2014年)
専門家向け診療ガイドライン
原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021
(監修 一般社団法人 日本内分泌学会/編集 一般社団法人 日本内分泌学会「原発性アルドステロン症診療ガイドライン策定と診療水準向上」委員会(委員長 成瀨光栄)/発行 診断と治療社/2021年)
褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018
(監修 日本内分泌学会/ 編集 日本内分泌学会『悪性褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成』委員会(委員長 成瀨光栄)/発行 診断と治療社/2018年)
わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント2016
(監修 日本内分泌学会/編集 日本内分泌学会『原発性アルドステロン症ガイドライン実施の実態調査と普及に向けた標準化に関する検討』委員会(委員長 成瀨光栄)/発行 診断と治療社/2016年)
その他の出版物
薬剤性内分泌障害診療マニュアル 初版
(編集顧問・兵庫県予防医学協会健康ライフプラザ健診センター 平田結喜緒/ 編集・医仁会武田総合病院内分泌センター・臨床研究センター 成瀬光栄・国立病院機構京都医療センター内分泌・代謝内科 田上哲也・国立国際医療研究センター病院内分泌代謝科 田辺晶代・医仁会武田総合病院薬局 馬瀬久宜/ 発行 診断と治療社/2022年)
下垂体疾患診療マニュアル 改訂第3版
(編集顧問・兵庫県予防医学協会健康ライフプラザ健診センター 平田結喜緒/編集・奈良県立医科大学糖尿病・内分泌内科学 髙橋裕・森山脳神経センター病院間脳下垂体センター 山田正三・医仁会武田総合病院内分泌センター 成瀬光栄/発行 診断と治療社/2021年)
内分泌画像検査・診断マニュアル 改訂第2版
(監修・兵庫県予防医学協会健康ライフプラザ健診センター 平田結喜緒/編集・医仁会武田総合病院内分泌センター 成瀬光栄・順天堂大学放射線科 桑鶴良平・国立国際医療研究センター糖尿病内分泌代謝科 田辺晶代・森山記念病院脳神経外科 山田正三/発行 診断と治療社/2020年)
甲状腺疾患診療マニュアル 改訂第3版
(編集顧問・隈病院 西川光重・国立病院機構京都医療センター内分泌代謝内科 田上哲也・伊藤病院 伊藤公一・医仁会武田総合病院内分泌センター 成瀬光栄/発行 診断と治療社/2020年)
内分泌センターにおける獲得公的研究費
1.国立国際医療研究センター
国際医療研究開発費「難治性副腎疾患レジストリを活用したエビデンス創出と我が国の診療の均てん化」(分担)
2.日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業
「難治性副腎疾患の診療の質向上に直結するエビデンス創出」(代表)
3.厚生労働省 難治性疾患政策研究事業
「副腎ホルモン産生異常症に関する研究」(分担)
外来診療表
※都合により外来担当医等が変更している場合がございますので、以下の◎休診・代診情報をご覧頂くか、或いは直接お電話にてお問合わせの上ご確認頂きますようお願い致します。